中国から伝わった伝統医学、中医学が日本で独自に発展したものが漢方です。
漢方の考え方をすごく簡単にいうと、あらゆるものをさまざまに分類して、人それぞれの体質に合わせて足りないないものは補い、多すぎるものは取り除くことで偏りのない状態にしてあげて、バランスがとれた状態=健康な状態にしようというもの。
「陰陽五行説」などの思考を重視する中医学に比べると、幸いにして(?)漢方はそこまで理論にこだわりません。
理論はともかく実際に効くものを、というわけです。
漢方薬は自然にある植物、鉱物、動物をけ原料にしてますが、その大部分は植物で、さらにその中の多くはハト麦、胡麻、ショウガ、など私たちがふつうに食べている食材です。
食材も漢方の生薬(原料)も味によって5種類(五味)に、体を温めるか冷やすかという性質によって4種類(四気)に分けられます。
おもにこの5つの味のバランスと4つの性質との組み合わせによって、漢方薬は、その人の体質・不調の原因・症状(これを漢方では「証」といいます)に合わせて、補い合って相乗的に効果が高くなるように、数多くの生薬の中からいくつかを選んで配合します。
キッチンには薬がいっぱい
さらっと説明しただけですが、これでもまだややこしいですね。
言い換えれば、自然に身の回りにあったものを何千年もかけていろいろと試し、さまざまな症状に効くものを集めていった知恵の結集ということ。
いわば、”おばあちゃんの知恵”の集大成版。
自然にあるものをそのまま用いるのですから、本当は単純で分かりやすいものです。
もともと食材を多用している漢方薬。つまり食べ物は「薬」というわけで、簡単に普段の食事にも応用することができます。
大根ひとつとってみても、寒気がするときは温める性質のある葉の部分をショウガ、ニンニクと炒める。
逆にのぼせたりして熱をもっているなら体を冷やす作用のある根の部分を生で、たとえば大根おろしで。
咳がでるときはおろした汁にお好みで蜂蜜を加えて飲む、などなど。
米や麦などの穀物、野菜、果物、そして調味料に至るまで、こんなふうに食べ物の性質をよく知っていれば、食事もそのまま薬になってしまします。
十数年前までは当たり前だったことですが、ちょっとした不調を治したり体質改善、病気の予防は食卓でできるのです。
体調を考えて無数の食材の中から効果のあるものを選んで組み合わせ、料理を創造する場、キッチンには健康を守る薬があふれています。
もしかして風邪かも・・・というときに
風邪には大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつは体がほてって熱っぽく、早くから熱が出ることが多く、喉や鼻の痛みがあるタイプ。布団をかけて暖かく、なんて我慢できません。
もうひとつは手足が冷え、薄い鼻水がたくさん出ることの多い、寒気が強いタイプです。
“熱”タイプの風邪なら熱と炎症をを鎮めるようにします。
「寒」の性質のもの、体を冷やすフルーツもこういう風邪のときはとくにおいしいもの。炎症の熱をとる「苦」のものもいいでしょう。
大根や緑茶には炎症を鎮め熱を下げる作用があります。
“寒”タイプの風邪ならネギやショウガ、ニンニクなど体をあたため発汗させる「温」のものや「辛」のものをとります。
卵酒などもいいでしょう。
また風邪にいいビタミンCをとりたいところですが、フルーツはそのままでは体を冷やすので、よくありません。
おすすめは「ミカンの黒焼き」。皮つきのまま黒っぽくなるまで焼き、熱いうちに皮をむいて食べます。
ちなみに酸っぱいものを熱くして飲むと、発汗作用で熱を下げ、血行が良くなって体のコリをほぐし、頭痛に効きます。日本では昔から梅干しに熱湯を注いで飲んでいましたが、同じように欧米ではレモン汁を熱くして飲むそうです。
これからの季節に多くなるのは“寒”タイプの風邪。
最初は寒気を感じていても、やがて喉が痛くなって熱が出て、というように“熱”タイプに変わっていクことが多いようです。