美肌と元気のもと「冷え」対策・大研究

美肌と元気のもと「冷え」対策・大研究

からだに力がはいらない、だるい、頭痛がする、眠れない…という症状はありませんか。これらの症状が「冷え」からくるものだということをご存知でしょうか。今や「冷え」は女性だけでなく、男性、子どもから老人までをもなやませているといいます。「冷え」は、放っておくと大きな病気にもつながってしまうかもしれないものなのです。

生活習慣が冷えをつくる

なんとなくからだの不調を感じるという声をよく耳にします。手足の冷え、歯周炎のはれがなかなかひかない、朝起きてすぐに目が開かない、肌のカサカサが気になる、最近脂肪が気になってきた、動悸がする、爪の色がよくない、めまい、貧血など、一見ばらばらの症状に思えますが、生活習慣病と関係しているものばかりです。

生活習慣病とは、歯周病、糖尿病、心臓病や脳血管、高血圧など循環器系の病気、そしてガンに焦点が当てられています。

これらの病気は、夜更かし、食べすぎ、運動不足など、不規則で不摂生な生活習慣がおもな原因と考えられます。それでじわじわとからだが弱ってしまい、いつのまにやら成人病に冒されてしまうことになります。

とくに現代人のからだの不調は冷えによるものが多いようです。冷えが起こると血管が縮み、血行が悪くなります。栄養も行き届かないうえに、排出すべき老廃物もからだの至る所に留まってしまいます。そのため、からだの各部分の細胞や内臓の機能が弱まり、からだが元気を無くしてしまいます。病院に行って検査をして、数値が異常を表してからでは、からだを元に戻すのに、時間も手間もかかってしまいます。生活習慣病を避けるためにも、冷えをからだから追い出す習慣を身につけてはいかがでしょうか。

「今の快適さと便利さだけを追求した生活には『衣食住』のすべてにわたって『冷え』の原因がひそんでいます」と高木先生は言います。
そこで「衣食住」のどのような点が問題なのかを検討してみました。

から見た「冷え」の原因

高木嘉子先生

ヨシコクリニック院長。東邦大学医学部卒業、同大学医学部第二内科をへて1977年東京三鷹市にヨシコクリニックを開業。漢方治療を取り入れた「冷え」対策に長年取り組み効果を上げている。著書に『自律神経失調症が必ず治る本』などがある。

冬だというのに、ミニスカートにタイツだけ。上半身は厚着なのに下半身は薄着のスタイルが目立っています。また、夏は冷房の中、下着同然のファッションに素足にサンダル。このようなファッションでは、「冷えたい」と言っているのと同じことなのです!

「冷えやすい女性はとくに服装には気をつけてほしいですね。女性は、妊娠、出産のために下腹部が厚い脂肪でおおわれ、男性よりも脂肪がついています。冷やしてしまうと、内側に冷えをため込んでしまい、なかなか冷えがとれにくくなってしまうというわけです。これはおなかに冷たい脂肪を巻きつけているようなものなのです!」と高木さんは言います。

から見た「冷え」の原因

冬にからだを冷やす夏野菜を食べたり、暖房の中で、冷たいフルーツやアイスクリームなどを食べるなど、季節外れのものを食べることはからだを冷やすことになります。

また、「14~15℃以下の飲み物はからだに負担がかかる」と高木さんは言います。「昔使っていた井戸水は14~15℃でした。これが、自然界にある、冷やしても害にならない最低温度なのです」。

今や、冷蔵庫で冷やすことは当たり前の時代。冷蔵庫で冷やした飲み物は約5℃です。「13℃以下になると、からだに負担をかけない37℃程度の温度にするため、必要以上に胃壁の血管が収縮し、血液循環が悪くなります。胃が温度を上げようとするため、体内の熱が奪われるのです」。このため、エネルギー不足、免疫力不足ということが起こります。また、甘いものや過食、ダイエットも冷えの原因だといいます。

から見た「冷え」の原因

現代の世の中、空調は欠かせないものとなっています。「冷暖房が普及しだし、ますます冷えが蓄えられた」と高木さんは指摘します。「外気温と室内との温度差が大きすぎ、その間を行ったり来たりしたりしていると体温調節にかかわる自律神経の働きに異常が起こってしまいます」。

冷房のきいた部屋にいることはからだの代謝機能を低下させてしまい、無防備になる夏には「冷え」を溜め込んでしまうのです。そして、あるとき突然、溜まりに溜まった冷えの症状がおそってくるのです。

また、「冬は、必要以上に暖房で室温を上げすぎると基礎代謝量が下がります。その結果、屋内と戸外での温度差が開きすぎ、急激な温度差に対応することが困難となってしまうのです」。暖かい空気は下から上に上昇し、冷たい空気は上から下へ下降する性質がありますが、体内でも同じ現象が起こります。「冬の外気は、心臓から遠い足元に停滞し、足を冷やし、その足の冷えが全身の冷えのもとになってしまいます」。これは、夏の冷房でも同じことが言えます。

 

「冷え」がからだと心をむしばむもとに

「冷え」がからだにたまると血液循環がとどこおって代謝がうまく行われません。血管が収縮し、血液循環が悪くなって必要なものは取り入れられず、不必要なものを取り除くことができなくなり、全身の機能に支障をきたしてしまいます。

からだが「冷え」の影響を受けると、体内の温度を保とうとして、熱の発散を防ごうとする交感神経が働きます。皮膚も体内温度を保とうと反応するため、血液の流れがとどこおってきます。そして、「冷え」が長時間続いたりすると、その状態に適応してしまい、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかなくなり、自律神経の乱れが起こってくるのです。

このようなことから、気力の低下、だるいといった症状、自律神経失調症、うつ病などということになってしまうのです。

「『冷え』は、思いやりの心や感謝の気持ちを少なくしてしまったり、人間関係に支障を起こしてしまう原因にもなりかねないのです」と高木さん。「冷え」をとることは、からだとこころ、両方を健康にすることではないでしょうか。

ほてりは「冷え」の入り口?!

「私は手足がほてっているから冷え性なんかじゃないわ」なんて思っていませんか。

ところが、「じつは、ほてりこそが冷えが入り込んでいる証拠」だと高木さんは言います。氷水などに手足をつけた直後、手足がほてったことありませんか。「これは急激に冷やされたことによって、からだの血管がなんとかしようと拡張し、血液循環が必要以上に活発になることによる現象なのです。ほてりもこれと同じで、『冷え』に対する防御反応なのです」。これには驚きです。このほてりを暑さと勘違いし、冷房の温度を下げるなどしていると、さらに「冷え」を呼ぶことになるのです。
「ほてりを放置し、からだを『冷やす』生活を続けた結果本格的な冷え性となってしまうのです。ほてりを感じているうちは、まだ『冷え』が入り口に入ったばかり。この期間にからだを温めることが肝心です」。と高木さん。なるほど、ほてりは、これ以上冷やしてはいけないというからだからのサインなのです。