世界のオーガニックコスメ認証基準の現状 その1

世界のオーガニックコスメ認証基準の現状 その1
~消費者に信頼されるオーガニックコスメ認証基準とは?~

はじめに

 現在、オーガニック食品(農産物、加工食品)の認証については、「世界統一的」な認証基準のベースがあり、それはIFOAM(国際有機農業運動連盟)が作ったものです。
しかしオーガニックコスメについては、様々な基準があり、「世界統一的」な基準のベースとなるものはありません。

ヨーロッパでは、オーガニックコスメの「世界統一的」な認証基準を目指す動きが出てきており、2008年には、コスメ認証機関「ネイトゥルー」が、そして2010年には、コスメ認証機関「コスモス」が設立されました。

とくに「コスモス」が注目されている理由は、ヨーロッパで有名な5団体(エコサート、英国土壌協会、イチュア、BDIH、コスメビオ)が協力して設立した認証団体だからです。設立後から8年後の2017年から、「コスモス」5団体の間での、統一のコスメ認証基準が実地されています。

「コスモス」は、「世界統一的」なコスメ認証基準団体となることを目指していますが、その基準では、いくつかの石油由来の合成成分も「使用可」となっています。
そのため「コスモス」認証基準に対して、疑問を抱く消費者も少なからずいます。

そうした現状にあって、「日本オーガニックコスメ協会」は、オーガニックコスメ認証基準は、消費者の立場から本当に安心安全であることを目指すべきであると考え、天然成分100%のオーガニックコスメ基準を普及していきたいと考えています。

【オーガニックコスメは、「世界統一的」な基準のベースがない】

現在、オーガニックコスメについては、日本では様々な誤った情報が流れています。
たとえば「EUのオーガニックコスメ認証マークがついた製品には一切、合成成分が使われていない」、「日本には、オーガニックコスメ基準がないけれど、EUには、統一されたコスメ基準がある」などなど。


そのような誤った情報が多く流れている理由は、化粧品成分について理解している人が少ないこと、ヨーロッパのコスメ基準が難解なこと、そして各日本メディアがEUの認証団体を直接に取材していないことなどがあります。


これまで「日本オーガニックコスメ協会」は、世界のオーガニックコスメ事情を正しく伝えるために、ヨーロッパの主要な認証団体を現地訪問し、直接に主催者に取材してきました。
いっぽうで化学の専門家や製造者と協力してヨーロッパのコスメ認証基準の詳細を検討してきました。


オーガニックコスメ認証基準について、正確な情報を得、そして伝えるために、これまで「日本オーガニックコスメ協会」が行った主な取材を次にあげます。


■2007年   「日本オーガニックコスメ協会」は、ドイツのマンハイムにある「BDIH(ドイツ化粧品医薬品商工連盟)」本部を訪れ、会長のヘラルド・デットマー氏をインタビューしました。
「BDIH」は、世界で初めてナチュラルコスメ基準を作ったところです。


■2009年   有機食品の世界統一基準を作った「IFOAM(国際有機農業運動連盟)」の本部(ドイツ、ボン市)を訪問して、オーガニックコスメ基準について意見交換をしました。

「IFOAM」は、世界で初めてオーガニック食品認証という考え方を打ち出した団体なので、新たに出てきたオーガニックコスメ認証については、どのような見解を持っているのかを聞くことがこの訪問の目的でした。

その際、「IFOAM」は、「オーガニックコスメの基準は、『IFOAM』のオーガニック加工食品の有機基準に匹敵するものがいいのではないか」と述べました。
つまりこのとき「IFOAM」は、石油合成成分などの使用を一切、認めない、「オーガニック食品と同等のオーガニックコスメ基準が望ましい」という見解を出しています。

■2011年   「日本オーガニックコスメ協会」は、韓国のソウルで開催されたコスメ認証の世界会議に参加し、「コスモス」設立メンバーである認証団体と意見を交わしました。


■2013年   来日した「ネイトゥルー」広報担当者を取材、さらに2014年には、「コスモス」基準のベース作りに大きな役割を果たしている化学の専門家をインタビューしました。

ここでは、以上のようなこれまでの取材の経緯を踏まえながら、オーガニックコスメ認証基準の現状と、及び課題について述べていきます。

【オーガニック食品には、「世界統一的」な基準のベースがある】

そもそもオーガニック認証という考え方はヨーロッパから始まります。
ほとんどのヨーロッパの認証団体は、まず有機農業を普及するためのNGO(非営利団体)としてスタートし、その後、有機食品の認証活動を始め、さらに後になってコスメ認証を始めました。
つまりオーガニックコスメの認証は、有機食品認証の後から、2000年代に出てきたものです。


現在、有機食品の認証基準においては、世界各地の認証団体や各国も「IFOAM(国際有機農業運動連盟)」が作った基準をベースにしています。
非営利団体である「IFOAM」は、現在、オーガニックコスメの認証を行っていませんが、ヨーロッパのオーガニックコスメ認証をしている団体の多くが「IFOAM」の協力メンバーでもあり、連携して活動しています。

【消費者の立場からオーガニックコスメ基準を作る】

オーガニックコスメについて、日本では従来からよくこんな声を聞きます。
「海外には、オーガニックコスメについて統一認証基準があるけれど、日本にはまだない。だから日本のオーガニックコスメは信用できない」。


しかしこれまで述べてきたように、海外にも、オーガニックコスメについて統一認証基準のベースに相当するものはありません。
たしかにヨーロッパでは、イギリスの「英国土壌協会」、フランスの「エコサート」、イタリアの「イチェア」などが統一基準を目指してコスメ認証団体「コスモス」を設立して動き出していますが、そのほかにもドイツの「デメター」、ベルギーの「ネイトゥルー」、アメリカの「USDAオーガニック」などの認証団体が併存して、コスメについて認証活動をしており、その基準はそれぞれ異なります。

繰り返しになりますが、現在の認証状況を把握する際の基本的な認識として、有機食品については、「世界統一的」な基準となるベースがあるけれど、オーガニックコスメには、「世界統一的」な基準となるベースがないということです。そのためコスメ認証に関しては、認証団体によってかなり異なる基準になっているという状況が続いています。