中世ヨーロッパの植物療法の担い手、ワイズウーマン

中世ヨーロッパの植物療法の担い手、ワイズウーマン



中世のヨーロッパにおいて、農民や庶民の間では、
家庭を守る主婦が伝統的な植物療法を活用して、家族や村の人々のために医者の役目を果たしていました。

とりわけ豊富なハーブの知識を持つ女性は「ワイズウーマン」(賢い女性)と
呼ばれ、彼女たちは助産婦もつとめていました。

「ワイズウーマン」は、病気や肌荒れのために薬草から治療薬を作ったり、
日頃の健康のために、身体を強くするハーブの料理やお茶のブレンドを
教えていました。

12世紀、ラインランドの修道女ヒルデガルドは、治療のために植物を含めた
自然のものを活用する著書『フィジカ』を書いて名声を博しました。

昔はヨーロッパだけではなく、世界各地に数多くのワイズウーマンが人々の美と健康を守るために貢献していました。


何千年もかけて体系化された植物療法

世界各地の植物療法で使う主な薬用植物をあげると、古代から中国で伝えられた中薬、日本に伝わった漢方薬や民間医薬、ヨーロッパのハーブやスパイス、インド伝統医学「アーユルヴェーダ」で用いられるハーブ、インドネシアやマレーシアなどで用いられてきた熱帯地方のハーブやスパイス(ジャムウ)、中近東のハーブやスパイス、そして樹脂類の香料、アメリカ大陸で用いられてきた先住民族のハーブなどがあります。

これらの伝統的な薬用植物は、病気の治療や健康向上だけではなく、スキンケアとしても用いられてきました。

近代に入って西洋的な科学がもてはやされるあまり、こうした世界各地の植物療法は、価値のない迷信とみなされた時代もありました。
しかし現代の薬の副作用や、現代化粧品による肌トラブルが増えていくにつれ、ふたたび植物療法が見直されてきました。
多くのオーガニックコスメは、長い歴史を持つ世界各地の植物療法の知恵に敬意を払い、それを現代によみがえらせたものと言えましょう。

植物療法に基づくオーガニックコスメ

オーガニックコスメは、「植物が主役」とよく言われますが、それだけでは言い尽くされていません。というのも、植物の中には、素肌や人体にとっても有害なものもあるからです。たんに植物というだけでは、オーガニックコスメの安心安全性を保障できるものではありません。

幸いなことに植物の安全性や性質については、すでに何千年も前の人々が試して、体系化してくれているのです。それが植物療法として、ある地域では口承で、ある地域では文献としてまとめられました。

植物療法では、それぞれの植物の効果効能だけではなく、採取する場所や時期、保存方法、そして使い方にいたるまで、事細かに決められています。それらの方法は、今の時代になっても、それほど訂正されることなく守り続けられています。

たとえば5000年前には確立されていたインドのアーユルヴェーダや、中国の中医学で教える植物の使い方は、現代も変わることなく、常に原点とすべきものとして尊重され、治療効果を実証しています。

そのように植物療法の治療効果の確かさ、そして安全性は、何千年もかけて人々が試し、そして世代を超えて伝えられてきた総合的な知識に裏付けられたものなのです。
遥かな時代に、ほとんど訂正する必要がないほど、完成された体系として伝わっているわけです。植物療法は、途方もなく長い時間をかけて築きあげられた貴重な人類の文化的遺産と言えましょう。

それゆえにオーガニックコスメは、たんに植物を使った化粧品ではなく、長い歴史によって効果や安全性が確認された植物療法に基づいた本物の化粧品といえるでしょう。