オーガニックコスメと石鹸
石けんの歴史と界面活性剤
オーガニックコスメにおいて、石けんは特別な存在です。
それは人類が最初に作った界面活性剤であり、以来、体や髪、衣服を洗う洗浄剤として使われてきました。石けんが人にとっても環境にとっても害がないことは長い歴史(5000年以上)が証明しています。
石けんは、油脂と無機物である水酸化ナトリウム(または水酸化カリウム)によって作られます。油脂には、動物性、植物性のものなど、数多くの種類がありますが、それぞれの油脂の性質によって、使い心地も異なる石けんができます。
近年になって、ドイツで合成界面活性剤が作られ、合成洗剤は石けんに取って代わるかに見えました。しかし肌トラブルや水質汚染につながることが知られるようになり、改めて今、長い歴史のある石けんが見直されています。
現代のオーガニックコスメ製品の製造にとって、もっとも難しいポイントは、乳化剤や洗浄成分となる界面活性剤です。多くのナチュラルコスメ(あるいはオーガニックコスメをうたう製品)では、合成界面活性剤を使用しています。
しかし合成界面活性剤は、肌の奥に浸透して、肌の機能を破壊して、乾燥肌や敏感肌の大きな原因となります。
また環境中に流れ出れば、河川や海の生態系を壊して、水汚染の原因となります。また、環境ホルモンになる可能性の高い合成界面活性剤も数多くあります。
本当に安心できるオーガニックコスメの進化にとって、石けんやその他の天然の界面活性剤が決め手になります。最近では、安全性が高い石けんは、洗浄アイテムだけではなく、クリームの乳化剤として用いるメーカーも多く出てきました。
石けんの製造方法は昔と基本的に同じ
もともと石けんは、偶然に出来上がったものでした。発見された5,000年前から製造方法は基本的に同じです。動物脂や植物油にアルカリを加え、加熱するとできます。
石けん作りにおいては、アルカリ成分として木灰(または海藻灰)が使われてきました。木灰などには炭酸カリウムや炭酸ナトリウムといったアルカリ成分が入っているからです。
ところで、石けんを漢字で書くと石鹸となりますが、この「鹸」という字は「あく」とも読み、アルカリを示している漢字です。また、灰は日本語で「はい」「かい」と読み、「灰汁」は「あく」と読みます。アルカリやカリウムの「カリ」は、「灰」を意味する化学用語です。
木の灰は、化学的には、炭酸カリウムや炭酸名ナトリウムに該当します。このアルカリは、鹸化剤(けんかざい)として、油脂を石けんにする働きを持っています。日本では、自然のアルカリとして、木灰、灰汁、ワラ灰、海藻灰などを洗濯に使っていました。
苛性ソーダの製造の歴史
1790年に、フランスでルブランが炭酸ソーダ(炭酸Na)を合成する方法を発明し、それを利用することによって苛性ソーダ(水酸化Na)を作り出しました。
翌年の1791年に工場が作られ、それが苛性ソーダ普及の始まりとなり、石けん作りに応用されるようになりました。
それから70年後の1861年には、ベルギーのソルベーが、より効率的な炭酸ナトリウムを作るソルベー法を開発しました。より大量に苛性ソーダを作ることを可能にし、石けん作りをさらに簡易なものにしました。
19 世紀になると、ドイツで海水(または塩水)を電気分解して苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を作り出す製造方法が開発され、以後は油脂と苛性ソーダを反応させて、より簡単に石けんが作られるようになりました。
海水または、食塩(=塩化ナトリウム Nacl)水には、ナトリウム(Na)と塩素(Cl)がそれぞれイオンの形で溶けています。
そこに電気を通すと、マイナスイオンが陽極に、プラスイオンが陰極に寄ってきます。陽極に集まったイオンが塩素、陰極に集まったイオンがナトリウムです。
このナトリウムが、水酸化ナトリウム(NaOH)、すなわち苛性ソーダになります。
このように、海水または、食塩水に電気を通すことで、大量に安価に苛性ソーダができます。そして、この苛性ソーダと油脂を使って、石けんを大量に作ることができるようになりました。