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黄カラスウリは、厳しい東北の寒さの中で働く女性たちが、スキンケア素材として使ってきたものです。黄カラスウリの実には、肌の修復や乾燥肌の改善をする働きがあり、手荒れのケアに効果があります。さらに黄カラスウリの根は、天然成分のベビーパウダーである「天花粉」として使われてきました。
しかし、戦後、農薬の使用が当たり前になり、生態系が壊れていってしまいました。
黄カラスウリは夜に花が咲くので、夜に受粉しなければならず、そのためにスズメガといわれる蛾が必要なのです。しかし農薬散布によって、黄カラスウリの受粉の役割を果たしていたスズメガの幼虫がいなくなってしまったのです。
しだいに黄カラスウリは減っていき、ほぼ絶滅に向かっていました。
そんな黄カラスウリを「もう一度、蘇らせたい」と、たった一人で再生プロジェクトを開始した人がいました。それが山形県庄内町の山澤清さんです。
山澤さんの再生プロジェクトは、庭で黄カラスウリを7本のみ栽培していた農家からタネを分けてもらうことから始まりました。黄カラスウリは、タネから育ててきちんとできるまでには最低4~5年はかかるといわれます。
もともと山澤さんは大型農業技術エンジニアとして農薬散布を指導する仕事に関わっていしたが、農薬による生態系の崩壊を目の当たりにしました。
「気がついたら、子供のころ、一緒に遊んでいた虫たちがみんな、いなくなっていた。農業技術エンジンニアは、最初のうちは僕の誇りだったけど、その仕事に疑問を持つようになった」。
さらに息子にはアトピー性皮膚炎発症があり、農地をもとに戻して、虫や動植物が生きられる安全な大地を蘇らせたいという気持ちからつのっていき、35年前に退職しました。
その後、山澤さんは徹底した環境保全型農業を目指して、オーガニックの上をいく「モアオーガニック」(more organic)農業を実践していきます。
山澤さんが運営する「株式会社ハーブ研究所」では、食用の鳩に抗生物質やワクチンを投与せず、畑で作った大豆やハーブを餌にし、その糞を畑の肥料として使っています。また育てる植物は、F1ではなく在来種のタネのみを選んでいます。そんな徹底した「モアオーガニック」農業の一環として、「黄カラスウリ再生プロジェクト」も始めたのでした。
もともと山澤さん
「黄カラスウリ再生プロジェクト」を始めて7年目、山澤さんは、ある感動的な光景に出会います。
それまで黄カラスウリの受粉は、山澤さん自らが手作業で行っていたのですが、なんとスズメガが現れたのです。絶滅したと思われていた蛾が、不思議なことに、黄カラスウリの再生とともに帰ってきたのです。
真夜中、黄カラスウリの蜜を吸うスズメガの姿は、山澤さんにとって、まさに「昔あったものをもう一度」という願いが一枚の絵になって蘇ったものでした。それは時空のすべてをつないでいる自然の神秘を目の当たりにした出来事でした。
2008年から一人で山澤さんが始めた「黄カラスウリ再生プロジェクト」。年々、種から苗を増やして、今や10万本を超える黄カラスウリを栽培しています。そして絶滅の危機から救った黄カラスウリは、日本のオーガニックコスメの貴重な原料として蘇ったのです。
総評: 4.0