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自然にも自分にも優しい『布ナプキン』で女性のからだを守る

自然にも自分にも優しい『布ナプキン』で女性のからだを守る

月経期間は自然と自分がつながる「レディースデイ」

女性にとって生理期間は、自分の身体と向き合うとても大切な時間です。
体調の変化も自然のリズムに合わせて身体が変化している、「生きている」しるし。
そんな「自然と自分」のつながりを感じ、
女性を内面からきれいにしてくれる生理の期間だからこそ、
月1回、自分の身体のなかの自然と寄り添う日として、
自然にも自分にも優しい『布ナプキン』で大切な時間を過ごしましょう。

「布ナプキン」って?

普通、生理のときは市販の使い捨てナプキンで経血を吸収し、ある程度の量になったら汚物入れに捨てます。通常、1回の月経でだいたい20枚以上のナプキンを使い捨てしていると言われています。また、使い捨てナプキンの素材は、高分子吸収ポリマーやポリエチレンフィルムなど主に石油化学製品でできており、最も女性が敏感になる生理期間中に肌に触れる素材としては、決して安全なものとは言えません。

一方、布ナプキンはやわらかな布に経血を吸収させ、それを洗って繰り返し使うものです。ゴミにならないので環境負荷が少なく、なおかつ肌に触れる部分が天然繊維なので、肌への負担がありません。

石油化学製品の使い捨てナプキンが身体に与える影響

多くの女性が当たり前のように使用している使い捨てナプキン(紙ナプキン)。使用されている素材は、血液をゼリー状に固める高吸収ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム)や、肌に直接触れる表面にもポリエチレンフィルムや、塩素漂白された不織布(接着剤や熱処理による接合布)、防漏材には、ポリエチレンフィルム、ラミネートなど、多くの化学物質が使われています。これらの化学物質は、発がん性があるといわれています。また、塩素漂白の過程で発生すると言われているダイオキシンには、子宮内膜症などの「女性の病気」や流産の原因につながる危険なものです。

これら多くの化学物質は、恐ろしいことに女性として最も大切な子宮や乳房に、最も蓄積されやすく、子宮がんや、子宮内膜症、乳がんといった病気を引き起こす要因となるのです。また、ひどい生理痛、生理不順、経血過多などの症状の発生要因にもなっています。

さらに、子供ができた時の、母体から受ける化学物質の子供への影響も大きく関連してきます。

オーガニックコットンの「布ナプキン」で月経期間がより心地良く過ごせる。

このように、当たり前のように使っていた「使い捨てナプキン」が女性の身体に与える影響がとても大きいのです。生理痛や生理不順は当たり前と考え、月経期間を我慢して過ごしている人も少なくないのではないでしょうか。でも、それを「布ナプキン」に変えることで、月経期間をより快適な日々にすることができるはずです。

布ナプキンのすばらしい効果
  • 経血量の減少
  • 生理痛の緩和、改善
  • ムレ、かぶれの緩和
  • PMS(月経前症候群)の改善
  • 生理不順の改善
  • ニオイの改善
  • 冷え性の改善
  • 洗って繰り返し使える
  • 地球にごみを増やさず、環境にやさしい

「オーガニック生活便」では、肌に触れる布、吸収体、縫い糸まですべてオーガニックコットン100%で作られた「布ナプキン」をお取り扱いしています。一度肌に触れてみると、その温かな肌ざわりに、身も心も安らぐことに驚くことでしょう。

布ナプキンの洗い方
  1. つけ置きして汚れをゆるめる
    まず、つけ置き用の容器を用意します(フタ付きのものだと、中が見える心配もありません)。使った後の布ナプキンは、汚れを最初にこすり洗いせずに、使用後そのまま液体せっけんやアルカリ性の洗浄剤(炭酸ソーダ、かぐや姫の洗い水など)につけておくと、汚れがゆるんでいきます(約2時間以上)。ただし、42℃以上のお湯だと血液が固まって落ちにくくなります。必ず水またはぬるま湯で。事前にもみ洗いをすると繊維の中に汚れが入り込み、シミになりやすいようですので、そのままつけ置きするのがポイントです。
  2. もみ洗いして汚れを落とす
    汚れがゆるんだら、水を替えて、水かぬるま湯でもみ洗いをして、しっかり汚れを落とします。自分から出た経血を自分で洗うことで、色や量、においなどをチェックでき、体調を知ることにもつながります。汚れが落ちきらない場合は、液体せっけんを足して、しっかり汚れを落としましょう。
  3. 丁寧にすすぐ
    よくすすいでから十分にしぼって脱水しましょう。そのまま他の洗濯物と一緒に洗濯機に入れて、仕上げ洗いもオススメです。 ※漂白剤の使用は、化学的な成分が強く、生地の色や風合いを損ねる場合がありますのでご注意ください。
  4. 清潔に乾かす
    太陽の下で干して、しっかり乾かしましょう。太陽の光に当てることで、日光消毒にもなります。
おすすめ紹介商品
メイドインアース 布ナプキン

使いやすく、大きめなので安心です。

三つ折り 布ナプキン ストライプ ×起毛/茶(薄手) メイド・イン・アース 三つ折り 布ナプキン チェック ×起毛/茶(厚手) メイド・イン・アース 布ナプキントライアルセット(ストライプ) メイド・イン・アース
アイシス かぐや姫の洗い水

つけおき洗いで、布ナプキンが柔らかく洗い上がります。

かぐや姫の洗い水 1000ml アイシス

地球を守り、暮らしを豊かにするオーガニックコットン

地球を守り、暮らしを豊かにするオーガニックコットン
知っておきたいこと
日本でも綿を作っていた
日本には平安時代初頭や鎌倉時代に綿が持ち込まれた記録がありますが、本格的に栽培が始まったのは戦国時代から桃山時代にかけてのことです。以来麻とともに庶民の衣服の原料として、米と並ぶ農作物になりました。一時は200種以上の地方品種があったとも言われています。

しかし、明治時代になって自動織機が発明されると状況が一変しました。綿製品の大量生産が可能になると同時に、中国から原綿を輸入するようになったのです。国産綿は急速に衰退し、昭和30年代に日本産の綿は市場から消えてしまいました。

日本から綿が消えた理由

綿にはアメリカ、アフリカ原産の「新大陸綿」とアジア原産の「旧大陸綿」の2種類が存在します。日本で栽培されていたのは、「旧大陸綿」の流れを汲むものでした。これは”繊維が短いため紡績や機械織りには向かない、布は強度があるもののやや厚手に織り上がる”といわれます。

日本から綿が消えた理由 しかし、千葉県鴨川市で日本の在来綿の栽培に取り組んでいる「鴨川和綿農園」の田畑健さんは「紡績ができないほど短いものではないし、機械でも織れます。必ずしも厚手で粗い布ができるわけではありません」と語ります。明治時代に中国から輸入していたのもじつは「旧大陸綿」でした。大量生産には安い原料が必要。国産綿が廃れてしまったのは何より”コスト”の問題だったのです。

「国産綿は1kgあたり16000円しますが、輸入綿は700円くらいです」と田畑さん。この安値を実現しているのは農薬、化学肥料の使用と発展途上国の安い人件費なのです。

農薬が支える綿の大量生産

日本だけでなく、ヨーロッパのほとんどの国も綿を栽培していません。先進国の膨大な綿の需要を支えているのは中南米や中国、インド、アフリカなどの国です。また、アメリカでは”輸出振興”の名のもと、大量生産をさせるために政府が補助金を出しています。大量の綿を安く生産するためには、自然まかせでは不可能。どうしても環境に負担をかけざるを得ません。

綿花の大量生産はそれを好む害虫を呼び寄せます。害虫駆除の手間と人手を省くために使われるのは大量の殺虫剤。世界で使用されている殺虫剤の25%は綿花栽培によるもので、1種類の作物としては最大です。

WHOが「大変危険な農薬」として挙げているものも少なくありません。日本で劇物、PRTR法(アイシス5号、14号参照)指定化学物質である有機リン系殺虫剤「モノクロトホス」の名前も見えます。

薬剤散布の果てに不毛の大地が

薬剤散布の果てに不毛の大地が はびこる雑草を除草剤で除き、収穫を早めるために枯葉剤を散布すれば、土地は傷み、やせてしまいます。それを補うために化学肥料が投与されますが、それでは健康な作物は育ちません。雑草や病害虫に抵抗できるはずもなく、さらに大量の除草剤や殺虫剤が撒かれます。

「フェアトレードカンパニー」によると、インドでは国内の農地の5%しかない綿畑に、なんと国内全使用量の半分の農薬が散布されているといいます。鴨川和綿農園の田畑さんも「インドでは識字率が低いために、多くの農民は使用法をきちんと読まずに農薬を使っているようです。だから必要以上に散布してしまっている可能性が高く、将来大変なことになるのではないでしょうか」と危惧します。

薬剤散布を繰り返すうちに、砂漠のようになったり塩を吹いたりして、とうとう何も栽培することができなくなった畑も世界中にあるのです。

農薬を多用する綿花栽培が貧困を招く

大量生産のためには、先進国から輸入される農薬や化学肥料が欠かせません。これらは大変高価なもので、農家は多額の借金をして買っています。収穫量が上がらずに借金を返済できない農家も多く、収穫期には毎週のように新聞に農民の自殺の記事が載るといいます。農薬中毒に苦しむ農民も少なくありません。そして、子どもや女性が安い賃金で、綿花の収穫作業に駆り出されています。皮肉なことに原綿輸出国のパキスタンでは、先進国の人々が着古したり、”流行遅れ”と廃棄したものを輸入して着ているのです。

在来綿を滅ぼす改造品種

「新大陸綿」の原種や地方品種も消えつつあります。収穫量を上げるために、綿そのものの品種改良が進んでいるからです。また、遺伝子を組み換えて農薬をかけても枯れないようにしたり、害虫が葉を食べると死ぬようになっている綿も開発されています。無農薬栽培のオーガニックコットンの人気が上昇していることもあり、遺伝子組み換えにより農薬が不要になった綿が「オーガニックコットン」として売られる例も出ています。

F1品種を代表とする多くの改造種子が次世代の種を残せないように、これらの綿の種にも発芽能力がありません。農家が毎年種を買わなければならないだけでなく、改造綿花の花粉が飛散して従来の綿花と交雑してしまい、綿全体の不作につながる可能性も指摘されています。

農家が注目するオーガニックコットン

農家が注目するオーガニックコットン農薬や化学肥料を使わないオーガニックコットンの栽培には、手間や労力がかかることはもとより、収穫量減少のリスク、認証取得のための煩雑な手続き、そして何より有機栽培を”続ける”ことへの覚悟が求められます。日本オーガニックコットン協会によると、それでも農薬や化学肥料による環境破壊に危機感を持ち、オーガニックコットンの生産に踏み切る農家が増えているそうです。現在はアメリカ、ペルー、インド、エジプト、トルコなどを中心に、世界17カ国でオーガニックコットンが栽培されています。

「ファッション」を考え直そう

「ファッション」を考え直そう買う側にすれば、ものの値段は安い方が良いでしょう。しかし、安いから使い捨てにできる、流行が変わったから新しいものを買うという私たちの消費行為の裏には、さまざまな問題があることに気づかなければなりません。農薬の大量使用による環境破壊だけでなく、大量の古着の廃棄によるゴミの問題、労働力や作物を安く買い叩かれる発展途上国の人々の貧困にも目を向ける必要があります。

流行を追い求めて大量生産、大量消費、大量破棄することから、環境に配慮したものを、正当な対価を払って求め、大切に長く使う。そんなファッションに対する考え方の転換が、今まさに私たちに求められているのです。



参考文献
日本オーガニックコットン協会資料
「ピープルツリー」2003年初夏号、夏増刊号(フェアトレードカンパニー刊)
「綿と木綿の歴史」武部善人著(御茶の水書房刊)
「事典絹と木綿の江戸時代」山脇悌二郎著(吉田弘文館刊)

天然の色をより身近に「草木染め」

自然の色 天然の色をより身近に「草木染め」
自然から合成へ、合成から自然へ
人間は石器時代から自然にあるさまざまなものを利用して色を作り出し、生活の中で使っていました。その原料は土や鉱石、貝や虫の分泌物などで、最も多く利用されたのは、植物から採られた染料や顔料です。そんな時代が、19世紀の中ごろまで続きました。

しかし20世紀に始まった現代の石油化学は、私たちの祖先が時間をかけて作ってきた自然の色をも、容易に再現してしまいました。手間もコストもかからない、加えて耐久性もある合成の色に押されて、生活の中から自然の色は急速になくなっていったのです。しかし、化学合成の色があふれる現代社会にあって、自然の色をより身近なものにしてゆきたいと願う人たちが増えています。
「草木染め」という言葉の始まり
川崎市柿生に工房を構える染色家の山崎和樹さんは、親子三代にわたって草木染めに取り組んでいます。じつは「草木染」という言葉を最初に使ったのは山崎さんの祖父の山崎斌(あきら)氏。昭和5年、植物染料で染めた手織り紬の展覧会を銀座で開いたとき、化学染料と区別するために、草木を始めとした天然染料で染めたものを「草木染」と名づけたのです。山崎斌氏は世界恐慌で疲弊した農村を、手織り紬と草木染めによって復興しようと尽力した人でした。
林業、農業の振興や環境保護にもつながる草木染め
林業、農業の振興や環境保護にもつながる草木染め「水はものを溶かす力があり、汚したらみんな溜まってしまいます。だから川や海には流さない。土には浄化というか、分解する力がありますから、土の中にもともとあるものや、土で分解するものを草木染では使います」 と山崎さんはいいます。

「化学染料の危険性がわかり始めているので、そのうち化学染料が使いづらくなる時代が来るかも知れないという人もいます。それなら草木染めにも可能性が開けてくるのではないかと思っています」。
草木染めの需要が増せば、その原料になる植物を栽培したり、採取するための場所を整えなければなりません。具体的には休耕田の利用や森林、雑木林の整備と復活です。それによって自然保護や農業、林業の発展に寄与できる可能性もあります。山崎さんも実際に工房の敷地に雑木を残し、染料のもとになる木の枝や葉を採取したり、植物を栽培したりもしています。つまり私たちの生活の中に自然の色をとり戻すことは、壊された自然環境を再生することとつながっているのです。
草木染めを体験すると、目が自然に向かう
草木染めを体験すると、目が自然に向かう山崎さんは現在、天然染料の研究のかたわら講習会を開いて、一般の人たちに草木染めを教えています。より多くの人にその良さを理解してもらうには、やってもらうことがいちばんだと考えるからです。
「実際それまで何も考えず草を踏んで歩いていた人が、草木染めをやるようになると、身の回りの草木に関心を持ち、自分をとりまく自然に目が向くようになるみたいですよ」。

タイの農村女性による手仕事の草木染め
タイの農村女性による手仕事の草木染めタイ在住のデザイナー、佐藤宇三郎さんはイサン地方の農村に今でも残る、草木染めの布を使って服を作っています。村の女性たちが自宅で飼っている蚕や栽培している綿を使い、手仕事で糸を紡ぎ、村やその周辺で採れる植物を使って染め、手機で織っています。日本でも江戸時代まであった「家内制手工業」の世界。農薬や化学肥料、化学薬品は高価なので使っていません。認証こそないものの、まさにオーガニック。

しかしタイ全体では伝統的な手織り、手紡ぎ、草木染めによる布や服作りは廃れてゆく傾向にあり、最近出回っているのは大量生産によって化学染料で染められる服がほとんどです。発ガン性が認められ、欧州で禁止されたため売れなくなった石油系のアゾ染料の、新たなマーケットになっているともいわれているのです。先進国が危険だからと認定して禁止したものが発展途上国に売られ、その環境を汚染するという図式がここでも見られます。そんな中、佐藤さんが草木染めにこだわるのは

「水に還らない、土に還らないものは使いたくない」
という考えからです。
科学の視点で植物の色を見直す
伝統的な草木染めとは違った、現代科学の視点から植物染料にこだわっているのが㈱グリーンオーナーズ会議です。研究所と協力して植物染料の試作試験を繰り返し、たんぱく質やクエン酸などを使ったより自然な方法で弱点を克服してきました。

最近は草木染めと銘打ちながら、化学染料の補助できれいな色を出しているものが少なくないといわれています。しかし、グリーンオーナーズ会議では染料を長時間静置して不純物を沈殿させ、鮮やかな色を実現しています。

化学染料がむらなく染まって見えるのは、色素の反射が画一的だから。それに対して植物染料は、光が乱反射します。このことで鮮やかながらも人の目にやさしく、周囲の風景に違和感なくなじむのです。また、粒子が化学染料よりも大きいため、染まりにくく色落ちしやすい代わりに、他のものに色移りをしてしまった場合でも水洗いで落とすことができるという利点もあります。
大企業も「自然の色」に注目している
「草木染めは色が変わりやすいのでは?」というイメージがありますが、「堅牢度3を最低基準にしています」とグリーンオーナーズ会議常務の大沢司郎さんはいいます。堅牢度とは光やpH変化による退色、変色、磨耗などに対する品質のレベルで、最低が1、最高が5。まずまずの耐久性といえます。

また、製品作りは従来の化学染料の設備の一部を使って行われています。植物染料専用の設備はまだなく、そのシェアは1%ほどと小さなものなので、専用の設備を作っても採算があわないのです。それでも、以前に比べると植物染料の需要は確実に増えているといいます。近年では大手メーカーからの協力の以来もあるそうです。グリーンオーナーズ会議の製品はタオル、アンダーウエア、パジャマ、部屋着など日常で使えるアイテムがそろい、自然の色を現代の日常生活の中で楽しみやすくなっているのがうれしいところです。
植物性の原料で美しい色の画材を
植物性の原料で美しい色の画材を美しい絵を描き出す画材も、昔は鉱石を砕いたものや植物から抽出した顔料が使われ、それに亜麻仁油やバルサム、卵、アラビアゴムなどを混ぜて絵を描いていました。しかし植物性のものは酸化しやすく、手間がかかる上に高価な原料も多いため、19世紀末以降は簡単に作れて耐久性もある石油系のものに取って代わられてしまいました。

そんな現代でも、植物性の色素で画材を作っているメーカーがあります。スイス、ドルナッハにあり、ルドルフ・シュタイナーが提唱した「人智学」を実践する自由大学。その「植物の色」研究部門の研究者だったスヴェント・ペターセンと妻マリアンヌ・アイジングが故郷デンマークで設立したアルテミス社です。

アカネ、クロウメモドキ、モクセイソウ、インディゴ、クルミなどの植物を日光乾燥させ、煮出して得た色のエキスに酸化アルミニウムを加えると「ピグメント」と呼ばれる顔料が沈殿します。これを乾燥、粉砕したものにアラビアゴムを加え、乳鉢で練って絵の具が完成します。
子どもたちに「自然の色」を伝えたい
子どもたちに「自然の色」を伝えたい従来は使う人自身がピグメントとアラビアゴムを混ぜていたのですが、これは大人でも難しいもの。そこでアルテミス社はパステル、色鉛筆、調合済みの絵の具の開発に乗り出したのです。それは植物から色を作ることに強くひかれ、「子どもたちに植物の色を知ってもらいたい、使わせたい」というペターセンの願いからでした。

現在アルテミス社の画材は子どもたちの教育の現場だけでなく、絵を描くことによってこころの傷や病を見出し、治療する絵画療法にも使われています。プロの芸術家でアルテミス社の植物性画材を愛用している人もいるのですが、下書きや習作などには利用しても本番の作品には使われません。なぜなら、植物性の画材は数十年経つと色が褪せ、やがて消えてしまうからです。また油絵の具に関しては、どうしても石油系の物質を使わざるを得ず、同社は環境面で問題があるため製造していません。
太陽が作る植物の色
太陽が作る植物の色植物性の顔料で描かれた自由大学大ホールの天井画は、その美しさで世界的に高く賞賛されています。ルドルフ・シュタイナーは、植物絵の具についてこう説明しました。

「その色は光と水に結びつき、暖かく、光が浸透する。一日の、季節の、光と明るみの変化に応じる。それらは気持ちよい調和に結びつき、それぞれが際立って孤立することはない」。
日本でアルテミス社の製品を取り扱う㈱おもちゃ箱の社長、斉藤和彦さんはこういいます。
「つまり、”太陽が作った色”ということですね」。
植物が育つには、良い土、きれいな水とともに、太陽の光が不可欠です。植物性の絵の具や色鉛筆の色にほのかな温かみを感じたり、植物性の色を使って描かれた絵を見ると気持ちがほっとするのは、植物の色が自然とつながったものだからかもしれません。
もう一度、自然の色を生活の中に取り戻したい
自然の色は「光に弱い」「色が落ちる、褪せる」「くすんだ色や中間色が多い」「色が均一でない」 という印象があります。草木染めが注目されている近年でも、工芸や芸術として、あるいは主婦や中高年の趣味、児童生徒の体験学習としての人気で、実際の生活の中に取り入れられているという印象はまだ薄いように思われます。そんな自然の色をより身近にしてゆくには、どうしたらいいのでしょうか?
何世代もが受け継いでいく自然の色
何世代もが受け継いでいく自然の色山崎さんは「草木染めは、落ちたら染め直しすればいいんですよ」といいます。昔、着物はまず薄い色に染め、洗い張りをするたびに濃い色に染め直してゆき、親から子、子から孫へと受け継いでいたのだそうです。科学染料で染められ、大量生産される現代の服にはない発想です。

じつは染料になる植物は、私たちの身の回りにたくさんあります。森や雑木林にはケヤキ、クスンキ、クリ、モミジ、サクラなど、野原や畑にはタンポポ、ヨモギ、セイタカアワダチソウ、ドクダミなど、家庭の庭やプランターの中には、ビワ、マリーゴールド、ラベンダーやローズマリーのようなハーブ類など。キッチンにあるコーヒーやお茶、タマネギの皮やピーナッツも染料になります。染め方さえ知っていれば、自分で好きな色に染めることもできるのです。
「落ちてもいい」と考え方を変えてみる
自然の色を実際の生活に取り入れるには、洗いざらしのジーンズや無垢の木の数のように、色落ちや変色を”味わい”として楽しんでしまうという発想の転換も必要です。

「草木染めは、落ちたっていいんです。何も害がない。合成染料は落ちたら大変です」
というのは佐藤さん。草木染めで染料の元となる植物の中にはウコン、チョウジ、ヨモギ、ドクダミなどの薬用植物も少なくありません。落ちても環境中で分解されるだけでなく、からだに付着してもその薬効で人体を守ってくれます。「最初に草木染めがされたのは、包帯のようなものではないか」という説まであるとか。興味深いことに、トリカブトのような毒性を持つ植物による草木染めは伝わっていないのです。

おもちゃ箱の斉藤さんは、植物顔料の色あせについてこういいます。

「植物から採られた色は生きています。だから変わって行くのは当然なんです」。
自然だからこその違いを知ってもらう
グリーンオーナーズ会議の大沢さんは「植物染めは同じ染料で同じように染めても、色が変わることがあります。だから、店頭に並べると同じ色でも微妙な違いが出てしまう」といいます。多くの人はその違いに「不良品では」と戸惑いや不安を抱きがち。でも自然の色だからこそ微妙な違いが出てくるわけで、そのことを消費者に理解してもらう必要がありそうです。
本当は鮮やかで澄んだ自然の色
山崎さんの作品も、佐藤さんの服も、グリーンオーナーズ会議が作るタオルやウエア類も、アルテミス社の絵の具やパステルなども鮮やかで透明感のある色が多くて驚きます。天然色素にありがちな「くすんだ感じ」「中間色」という先入観がくつがえります。

記憶に新しいのは、皇室の「即位の礼」や婚礼の際に見ることができる十二単。光に溶け込むような美しい色が貴族文化の鮮やかさを思わせましたが、すべて昔ながらの草木染で染められたものです。
オーガニックライフへの転換
オーガニックライフへの転換自然の色を実際の生活の中で利用し、楽しむには、私たちの価値観も変えてゆくべきかも知れません。均一で変わらないことが良いという考え方から、多様性と変化を受け入れる考え方へ。矢継ぎ早に新しいものを作り出すことから、ものに対して時間と手間をかけられるゆとりを持つこと。そして何より、汚染のない豊かな自然が身近にあること。

自然の色を普段の暮らしの中で使うことは、やがてオーガニックな社会を作ることにつながってゆくのです。