『IFOAM』本部があるボン市。ベートベンが生まれた町です。市庁舎前に銅像がありました
ドイツ出身のトーマスさん(写真左端)。13年間、アイフォームで活動してきました
IFOAM本部のスタッフとアイシス取材班。なごやかに、ときには熱く語りました。(写真左端から)トーマスさん、キャサリンさん、サラさん、アイシス取材班
理事長のキャサリンさん。第一印象は、アメリカからきた『鉄の女』。じつはとてもやさしい方でした。
インタビューが終わり、ほっとして全員にっこり
7月9日、アイシス編集部はドイツを訪れ、ボン市にある『IFOAM(アイフォーム)』本部をインタビューしました。『IFOAM』は、ヨーロッパで、もっとも早くから有機運動をリードしてきた国際NGOです。
世界各国のメンバーと協力して有機運動を推進する
ボン市は、世界でもっとも有名といっていい音楽家ベートベンが生まれた町で、あちこちに彼にちなんだ建物があります。ボン大学もあるので学生の姿も多く、街にはのんびりとした空気が流れていました。『IFOAM』本部は、ボン郊外の緑に囲まれた、モダンな建物の中にありました。
今回、日本から来たアイシスガイアネットの取材のために『IFOAM』側で応対してくれたのは、シニアマネジャー(総務人事部長)トーマス・チャプカさん、メンバーズコーディネーターのサラ・バンダさんと、そして会長のキャサリンさんでした。(アイシス編集部が、ここを訪れるきっかけを作ってくれたのは、日本における『IFOAM』の「世界理事」を勤めている郡山昌也さんです。ありがとうございました)。
『IFOAM』の活動は、1972年、フランスからスタートしました。『IFOAM』が、30年以上の歴史を通じて作ってきたオーガニック基準は、いろいろな各団体の基準作りのベースになっています。今では誰もが知るようになった環境マネジメントシステムの『ISO』も、『IFOAM』の協力のもとに基準を設けています。また有機の世界基準を目指した「CODEX委員会」の有機食品ガイドラインを作るときにも、『IFOAM』の基準がベースになっています。また『IFOAM』は、国連と一緒に、オーガニックをテーマにした会議やセミナーもオーガナイズしています。
しかし13年間、『IFOAM』で活動してきたトーマスさんによると、「今でこそ、国連ともいい協力関係を築いていますが、以前の『IFOAM』は、まだそんな大きな信頼を得ていませんでした。環境破壊や食品の安全性などが、世界的な課題になってくるとともに、『IFOAM』の価値が認められ、評価されるようになったのです」。
『IFOAM』の会員として所属する団体は、現在、750団体。オーストラリア、イタリア、ウガンダ、インド、日本など、116ヶ国に広がっており、世界各地に『IFOAM』の支部があります。トーマスさんは、『IFOAM』の活動の方向性について、次のように語りました。
「有機農業は人、動物、土壌の健康を守ります。環境保護やエコロジーという世界的なテーマから見ても、有機農業の推進は欠かせません。また最近は、大きな資本があるところが有機という分野にビジネスを展開するようになっていますが、アジアやアフリカの小規模農家が守られていくような公平さが必要だと考えています」。
ボン市の本部に常駐しているのは、15人のスタッフ。ヨーロッパやアメリカだけではなく、中国、イタリア、アフリカから来たスタッフもおり、まさに国際NGOとしてのインターナショナルで民主的な空気が感じられました。
オーガニックコスメの世界基準を提案したい
会長のキャサリンさんには、『IFOAM』とオーガニック化粧品の認定基準について質問をしました。
「最近、『IFOAM』に、オーガニックコスメの世界基準を作って欲しいという依頼があちこちから来ていることはたしかです。しかし現在、『IFOAM』には、化粧品成分に詳しいスタッフがいないため、すぐに世界基準を作るのは難しいと思います」。
ヨーロッパでは、民間団体によるオーガニックコスメの認定がすでに始まっていますが、その基準には、かなりの化学成分も認められています。
そのことをキャサリンさんに伝えたところ、『IFOAM』には、加工食品の基準があるので、これを参考にオーガニックコスメの世界基準を作るのがいいかもしれませんね」という応えが帰ってきました。「化粧品は、食べ物と同じぐらいの安全性が求められるべきだと思いますから」。そのキャサリンさんの言葉には、深い共鳴を覚えました。
じつは2011年には、韓国で『IFOAM』の世界大会があり、そこではオーガニックコスメの認定について議題が出される予定があるとのこと。
「韓国と日本は近いことですし、ぜひアイシスガイアネットも『IFOAM』のメンバーとして参加して、オーガニックコスメの世界基準を提案してください」という要請がトーマスさんから出ました。
アイシスガイアネットとしても、これまで単行本『オーガニックコスメ』を出版してきた活動をもとに、日本からオーガニックコスメの世界基準について提案していきたいという意向を持っていたので、トーマスさんの言葉におおいに励まされた思いでした。
今年、アイシスガイアネットは、消費者がわかりやすい化粧品成分辞典の製作をスタートさせました。できれば2011年『IFOAM』の世界大会までにこの辞書を完成させたいと考えています。