2014年3月28日up
アイシス・ウィーン支部から、第2回目の記事が届きました。
ツヴェンテンドルフ原子力発電所。1977年に建設されたが、ついに稼動することなく、「眠れる原子力発電所」となった。
ツヴェンテンドルフ原子力発電所内部の原子炉格納容器。ここに核燃料は一度も入っていない。福島原発発電所と同じ型(沸水型)であるため、2011年以来、多くのジャーナリストが訪れたという。
ツヴェンテンドルフの町。緑と畑に囲まれたのどかな町だ。1977年には、多くの住民が原発発電所の稼動反対運動に立ち上がった。
緑豊かなオーストリア。森林面積が多い国として知られ、バイオマスエネルギーにも力を入れている。
原子力を使うか使わないは、ひとつの国の問題ではないのですね。
(アイシス編集部・編集長水上洋子)
オーストリアは「原発NO」でも、危険に囲まれている
オーストリアでは原発エネルギーは一度も使われていません。1977年にウィーン北部に「ツヴェンテンドルフ原発発電所」が建設されたものの、翌年の1978年の国民投票によって、オーストリアでは原発エネルギーを使わないことが決められたからです。それから9年後、旧ソ連でチェルノブイリ原発事故が起きたわけで、このときはヨーロッパ中に放射能汚染が広がりました。オーストリアの人々は、まさに先見の目があったと言うべきでしょう。
先の記事に書いたように、オーストリアの若者の間では「原発NO」は当たり前であり、それだけではなく、「EUの協力のもと、積極的にヨーロッパの脱原発に向けて働きかけていくべきだ」と考えている若者もいます。
オーストリア一国が原発エネルギーを使わないとしても、原発事故による放射能汚染の危険性は以前としてあり続けています。というのは、オーストリアの近隣諸国の国境沿いには、他国の原発発電所が並んでいるからです。
ヨーロッパの原発発電所の今
オーストリア国境近くの原子力発電所を調べてみました。
オーストリアには、「OZSV (Osterreichischer Zivilschutzverband Bundesverband、オーストリア民間防衛協会)」という団体があり、そこが運営しているサイトに原子力発電所の地図が出ていましたので、掲載しておきます。
驚くほど多くの原子力発電所に取り囲まれて、しかもとても近い場所に建っていて、改めて私自身も驚きました。
「オーストリアは脱原発だからと安心」とは言いがたい現状があります。チェコやスロバキアには、ウィーンから100km以内の場所に原子力発電所がいくつもあり、とても恐ろしく思いました。
チェコにある「ドコバンニィ(Dukovany)原子力発電所」は、オーストリアの国境からなんとたったの50kmしか離れていないそうです!この原子力発電所は4つの原子炉からなりたっており、1985-1987年の間に順々に稼動され始め、老朽化が懸念されています。事実、過去にも操作センター室(Schaltzentrale)の火災事故を起こしたり、事故につながる危険因子を持っていて懸念されている原発です。
地図参考:
http://www.zivilschutzverband.at/de_at/home/56
濃い黄色=国境から100km圏内
薄い黄色=国境から200km圏内
地図を見ると、原発エネルギーを使うか使わないかは、たんに一国の問題ではないことを実感します。
ぜひオーストリアは、積極的にヨーロッパ全体に向けて、「原発NO」という選択が賢明なものであることを訴え続けて欲しいと感じました。
世界に先駆けて脱原発を決めたオーストリアは、自然エネルギーを積極的に推進している国としても知られています。
(ゼマンみのり)