平安時代の美容法をよみがえらせる
平安時代の医学書を研究して生み出された日本の伝統コスメ。肌を美しく健康にする草根木皮を原料に活かし、一切の化学成分を使わずに仕上げています。
「平安時代から存在する美容法、『古式美容法』を今の時代によみがえらせたい」。『漢萌』は、美容研究家の三戸唯裕さんが作り上げた化粧品メーカーです。美容料作りの研究は昭和22年にさかのぼります。三戸さんが『古式美容法』に取り組むきっかけとなったのが、京都に伝わる美容料を作っていたひとりの女性との出会いでした。「あとにも先にも彼女のような素肌美人に会ったことはありません」。その女性が使っていたのがぬかと薬草をブレンドしたぬか袋だったのです。日本に伝わる美容法のすばらしさを改めて感じ、その復活を心に決めた出来事でした。
平安時代の医学書『医心方』が書かれたのは今から1000年以上も前の984年。中国から帰化した医学者が、中国の医学書を参考に日本古来の自然治療を取り入れてまとめたもので、さまざまな美容法についても述べられています。『古式美容法』では、有用な薬草の一部の成分を抽出するのではなく、草根木皮を丸ごと抽出した成分を使います。その製法もまた自然にこだわり、温泉や湧き水、薬石と呼ばれる石で改善した水などを使って、浸す、煎じる、熟成させる、というシンプルな作り方を守っています。
現代の化粧品にはほとんどないのが『熟成』という概念。『古式美容法』の化粧品成分は短くても半年、長くて15年もの間ゆっくりと熟成されます。容器もステンレスやポリ製のものではなく、昔から変わらない甕(かめ)や酒瓶を使っています。この甕の中でワインが熟成して深い味わいに成長するように、化粧品の成分も熟成によりキメが細かくなることによって肌への浸透が増すのだそうです。